33 名前:[sage] 投稿日:2007/11/05(月) 23:15:18 id:SFVWym5j0 (PC)
「プロデューサーさん、今日のお昼はどうされますか?」
「コンビニに弁当を買いに行こうかな、と。飽きてきましたけど」
仕事に一区切り付き、お昼を買いに行こうとしたプロデューサーに小鳥が話しかける。
「そうですか。もしよかったら、これをどうぞ♪」
そう言って小鳥は彼の机に布で覆われた塊を置く。
「以前にお約束したお弁当です。今日は一日中事務所と聞いてましたので・・・・・・作ってきました」
「本当に作ってくれたんですか!? ありがとうございます」
微笑みながら言う彼女に彼は手を合わせてお礼を言う。昼ご飯を一緒に食べた時に会話の流れから何気なくした約束。
彼女が毎日お弁当を作っているのを知っていたから言ったのだが・・・・・・彼自身は約束したことを今まで忘れていた。
休憩用のテーブルに向かい合って座り、さっそく蓋を開けてみる。
彼の好きな鳥の唐揚げ、ポテトサラダ、卵焼きが美味しそうに配置され、人参とブロッコリーが彩りを添える。
「おお、さすが手作りのお弁当だ」
「お口に合うかは分かりませんけど」
感動している彼に小鳥は照れながら断りを入れておく。
「いえいえ、絶対に合いますよ。それでは、いただきます」
そう言うと彼は箸を手に取り、唐揚げを一口。
「うん、美味しい。いやぁ、これが好きなんですよ」
「くすくす、この前の飲み会でも頼んでいたので入れてみました」
彼の満足の声に小鳥はようやく緊張を解き、自分の分に手を付ける。
「いやぁ、小鳥さんは本当に料理が上手ですね」
「高校の頃から作っていたから、さすがに慣れちゃいました」
彼の賞賛の言葉に小鳥は照れながら応える。
「最近は自分が食べる分しか作っていないので、他の人の口に合うか心配だったんですよぉ」
そう言いながら思い出す。最後に自分以外の人間が自分の料理を食べたのは何時が最後だったか。
最近の記憶では家族しか思い浮かばない。
「本当に美味しいですよ。あ、卵焼きが甘辛いのもいいですね」
彼女の言葉に彼は嬉しそうに卵焼きを口に運びながら答える。
「よかった。母には『食べさせる人もいないのに、料理だけは上手になってるわね』って、言われてるので。
 やはり食べてくれる人がいると気合いが入っちゃいます」
「いやぁ、小鳥さんの料理なら毎日食べても飽きませんよ。俺が立候補したいくらいです」
「もう、そんな事言われたら、本気にしちゃいますよ」
彼の言葉に小鳥は何とか落ち着いて答える。頬が赤くなってないことを祈りつつ。
「あはは、本気にしてもらっても・・・・・・」
彼は言葉を途中で打ち切ると胸に手をやる。
何か不味いことがあったのかと小鳥は思ったが、彼はそのまま携帯電話を出し、彼女に断りを入れてメールをチェックする。
「すいません、小鳥さん。ちょっと出ないといけなくなりました。お弁当、持って行っても構いませんか?」
「ええ、大丈夫ですよ、食べ終わったら、そのまま返してください」
なにか急な用件が入ったのか彼はあわただしく立ち上がり、弁当に蓋をしてナプキンで包み直す。
小鳥は返事をしながら、彼に営業車の鍵を渡す。
「ありがとうございます。帰りは四時くらいになると思います」
そう言うとお弁当と鍵を手に飛び出していった。
相変わらず慌ただしいなぁ、と思いつつ小鳥は先ほどの彼の言葉を思い出す。
「本当に本気にしちゃいますからね、プロデューサーさん」
そう言って小鳥は彼の出て行った扉に微笑みかけるのだった。

コンビニ弁当片手にFINALEを聞きながら思いついた。
虚しくなったが・・・・・・小鳥さんはお昼お弁当党毎日手作り派だと信じ込んでいた。