539 名前:[sage] 投稿日:2007/11/26(月) 22:45:18 id:CJf65/bV0 (PC)
「小鳥さん、本当に助かりました。まさかマンションにトラックが突っ込むとは」
「仕事中で良かったじゃないですか。それに困った時はお互い様です」
プロデューサーの言葉に小鳥はそう思う。もし彼に何かあったら・・・・・・自分がどうなるか予想できない。
「まあ、そうなんですが・・・・・・はぁ、まさか修理中は家には入れないとは・・・・・・」
「だからって、休憩室に住み着こうとしないで下さい。休憩室の改装予定は前にお知らせしましたよ」
彼の言葉に小鳥は苦笑する。大きい荷物を片手に休憩室前で呆然とする彼に声をかけて正解だった。
「でも、独身女性の家にお世話になるのは・・・・・・」
「気になさらないで下さい。さ、晩ご飯にしましょう。それにプロデューサーさんなら大歓迎ですから。」
冗談ぽく言ったが最後は本音だ。今晩のメニューは鮭のムニエル、昆布とじゃがいもの煮物、サラダ。
「小鳥さんは仕事ある日もきちんと作るんですね」
「二人分までなら、まだ時間がかかりませんから。はい、ご飯です」
小鳥からご飯を受け取り、彼は手を合わせる。小鳥も手を合わせ、箸をとる。
「うん、煮物がいい味ですね」
「お口にあって、良かったです。ご飯はお代わりありますから」
彼の笑顔に小鳥は安堵する。何度も手料理を出しているがやはり不安は残る。
「それにしても部屋の広さは似てますけど、小鳥さんの家の方が広く感じますね」
「プロデューサーさんの家は物が多すぎです。仕事柄、仕方がないのでしょうけど」
彼の言葉に小鳥は苦笑するが、昔は自分の部屋も似た感じだった。過去を感じさせるものはほとんど部屋にはないが。
「しかし、ステージ衣装が出てきたのには驚きました」
「忘れて下さい。私も驚いたんですから。じゃないと追い出しちゃいますよ♪」」
そう、予備の食器を出すために物置を開けた時に出てきたのだ、過去の産物が。
自分用に作った物なので他人が使えないため引き取った一着。
「忘れます。今でも似合っていると思いましたけど」
「もう無理ですよ。早く忘れて下さい」
ご飯をかき込む彼に言いつつ小鳥は微笑む。そもそも何度も着たい衣装ではないのだ。

「さて、そろそろ寝ないと明日が辛いですね」
「そうですね。じゃあ、俺はソファで寝ますので」
「いいえ、駄目です。それでは明日の仕事に差し障りますから」
「でも、予備の布団はないんですよね?」
小鳥の言葉に彼は再確認をする。
「だから、一緒のベッドで」
「いや、さすがにそれは」
「そうですね。こんな二十チョメチョメと一緒のお布団なんて・・・・・・」
「いや、問題はそこでなくて、男女が一緒の布団と言うことで」
いつもの言葉で勝負に出る小鳥だがさすがに今回は無理だった。
「では、プロデューサーさんと一緒に私もソファで寝ます」
「なんでそうなるんです!?」
「プロデューサーさんがソファで寝ると朝まで暖房を消せません。それならソファの方が温かいですから」
温暖化が進んだとは言え、夜と明け方はかなり冷える。布団なしでは確実に風邪をひく。暖房は消せない。
「それでしたら・・・・・・」
「もう、とにかく、一緒に布団で寝て下さい。それが一番エコロジーで面倒がないんです」
さらに何か言おうとする彼を小鳥は強引に黙らせる。自分だって恥ずかしいのだ。
とりあえず納得した彼を先にベッドに入らせ、その横に自分も入る。
「ほら、こっちの方が温かいです。なんか新婚初夜みたいですね♪」
「俺は緊張して眠れませんよ」
彼の方に身を寄せ、楽しそうに言う小鳥に彼は疲れたように言う。
「新婚と言えば、小鳥さん、さっきの衣装ですけど」
「もう、忘れて下さい、と言ったはずですよ」
「いや、そうですけど、似合っていると思いますよ」
「じゃあ、プロデューサーさんが着せさせて下さいね♪ ウェディングドレス」
小鳥の言葉に彼は苦笑する。そう出てきた衣装はウェディングドレス。
「いやいや、あんな高そうなのは無理ですよ・・・・・・お休みなさい」
そう言うと彼は安らかな寝息を立てだした。寝付きがいいなぁ、と思いながら小鳥は彼の言葉を思い出す。
「え〜と、高そうなのは無理ってことは、結婚は構わないって事かしら?」
彼に問いかけるが熟睡している彼からの返事はない。
「そう受け取っちゃいますからね、プロデューサーさん♪」
そう言って、彼の頬にキスをして小鳥も目を瞑る。今晩は熟睡できそうだ。

よう、相棒。いい眺めだ。ここから見れば、どのコンビニ弁当も大して変わらん


613 名前:[sage] 投稿日:2007/11/29(木) 00:11:01 ID:5zypJfBm0 (PC)
「お帰りなさい、ご主人様」
「すいません、間違えました」
玄関で出迎えてきたメイドにそう答え、プロデューサーはドアを閉める。
「ふう、やっぱり疲れていたんだ」
「間違っていません」
ため息をつく彼に小鳥は扉を開け、彼を家に引っ張り込んだ。
「もう、人がせっかくサービスしているのにその態度はなんですか?」
「疲れて帰ってきて、メイドさんが出迎えたら、まず自分の正気を疑います」
腰に手を当てて怒る彼女に彼は再度ため息をつく。
もっとも、家が修理中で居候の身ではそれが精一杯の抵抗だが。
「ともかく、ただいま、小鳥さん」
「お帰りなさい、ご主人様。お風呂とご飯どちらになさいますか?」
「・・・・・・もうご飯でいいです」
態度を変えない彼女に彼は平坦な声で答える。
「ちょっと、さっきから人がせっかく恥ずかしいのを我慢して演じているのに、
 もう少し喜んでくれても」
「もう朝からメイドさんは間に合っています」
そうもう十分なのだ。ハイテンションなやよいから冷めた千早、さらに文句が止まらない伊織。
正直、普通のメイドも猫耳メイドもしばらくは見たくない。
「うう、せっかく決死の覚悟で着たのに・・・・・・。
 二十チョメチョメがこの格好をするのには覚悟が要るのに」
「その覚悟は別の時につかうべきかと・・・・・・」
とりあえず荷物を置いて座り込む。今日も一日が濃かった。
「それに小鳥さんとは主従関係よりも対等な関係でいたいですし」
「つまり夫婦ですか♪」
彼の言葉に小鳥は願望を込めて尋ねてみる。
「いきなり夫婦が出てくるところに疑問を感じますが。
 お腹がすいたのでご飯をお願いします」
「はいはい、ちょっと待っていて下さい」
そう言って小鳥はキッチンに行きながら彼の言葉を思い出す。
「って、全然否定していないし、いきなりでなかったらいいのかしら。
 つまり恋人から始めましょうとか」
そう考えて、微笑む。うん、そう思うことにしよう。
「とりあえずメイド作戦は失敗ね。
 次は・・・・・・ミニスカサンタか巫女さんで再挑戦してみるか」
そう言って、クリームシチューを温め直す。
たまには変化球で勝負するのもありだと信じて。

俺 実は家にコンビニ弁当を買ってあるんすよ。.帰ったら、温め直そうと。サラダも買ってあったりして


689 名前:[sage] 投稿日:2007/12/01(土) 00:10:43 id:ddhSKa6e0 (PC)
「うう、せっかくの休日。お誘いもなければ、予定も無し。
 一人寂しく家事に追われる・・・・・・まあ、これが普通なんだけど」
「いや、俺がいる時点で普通ではありませんよ」
洗濯物を干す小鳥にプロデューサーは企画書を書きながら答える。
自宅用のPCをノートにして良かったと思う瞬間だ。
「あはは、そうですね。こっちを見たら、駄目ですよ」
「俺も自分の下着を女性に干されるのは恥ずかしいんですけど」
近くのコインランドリーに行こうとしたところを抑えられ、
問答無用で洗濯機に放り込まれる衣類。
「こっちの方が安上がりで手間いらずですよ」
「いや、小鳥さんだって、男の洗濯物が自分のと一緒に現れるのは嫌でしょ」
彼の言葉に小鳥は苦笑する。
「相手によりますけど、プロデューサーさんなら問題無しです」
「喜んでいいのか迷うところです」
彼はそう言いつつ鼻の頭をかく。本当に悩んでいるらしい。
「ふふ、実は近所に住む従兄が入院して、私が洗濯物を引き受けていたんです。
 さすがに自衛隊の独身者用官舎に入るのは緊張しましたけど。
 その時に男物の洗濯に慣れてしまいました」
「ああ、確か陸上自衛隊に勤務されていたとか言ってましたね」
以前にそんな話を彼女から聞いた気がする。
「だから、あまり気にしないでいいですよ」
「では、今度お礼にケーキでも買ってきます」
彼なりに納得したのかそう言って、ちょこんと頭を下げる。
「楽しみにしています」
「それにしても洗濯物を干す小鳥さんって・・・・・・」
そう言ってから彼は言いよどむ。
「なんですか?」
「いや、新妻みたいだなぁ、と」
真っ赤になって言う彼に小鳥は微笑む。
「じゃあ、プロデューサーさんのお嫁さんにしてもらっちゃおうかな♪」
「小鳥さんなら俺だけでなく、誰でも大歓迎ですよ」
「あはは、そう言ってくれると嬉しいですね」
彼の言葉にそう返し、小鳥は彼のワイシャツを物干しに掛けた。
私は他の誰でもなく、あなたのお嫁さんになりたい、と思いながら。

そう あの小鳥祭りの翌日が始まりだった。最初の印象は… そうだな、コンビニ弁当には飽きてきたな