小鳥スレより

[小鳥]
874 名前:[sage] 投稿日:2007/12/11(火) 22:36:56 id:ntWoEdil0 (PC)
「素敵な間取りね。そう思わない、あ・な・た」
「あははは、そうですね」
微笑みかけてくる小鳥にプロデューサーは乾いた笑みを返す。
「もう、そろそろ慣れて欲しいんだけど」
「いやぁ、なかなか慣れなくって」
そう言いつつ彼は室内を見回す。品のいい家具、計算された配置。
生活感はなく、人に見せることを意識した部屋だ。
「いい部屋ですね」
「そう思うでしょ? これがどのタイプでしたっけ?」
何とか言葉を発した彼にそう言い、小鳥は脇に控える男に質問する。
「はい、R3タイプの間取りになります。可能な限り各部屋のスペースを広く取ってあるのが特徴です」
「これなら子供が生まれても大丈夫ね」
男の言葉に小鳥は嬉しそうに頷く。小鳥さん、ノリノリだなぁ、そう思いつつ彼は苦笑する。
今いるのはある新築マンションのモデルルーム。
そこが主催するくじ引きで見事に商品券を引き当て、商品を受け取るついでに内部を見ているのだが・・・・・・
さらなる粗品の獲得を狙い、小鳥が新婚夫婦を演じようと提案してきた。
居候の身としては断れず、新妻の尻に敷かれている亭主を演じている。
「ねえ、あなた。オプションで床下収納庫の拡張が出来るんですって。このキッチン、気に入っちゃった」
「あははは、料理に期待できそうですねぇ」
小鳥から夫を演じるように言われているが・・・・・・どうしてもですます口調は止められない。
「期待していいわよ。って、もうこんな時間ね。そろそろ帰りましょうか」
そう言って小鳥は彼の左腕に抱きつく。そして、書いて置いたアンケート用紙を提出する。
「うふふ、ちゃんとプロデューサーさんの名字にしておきました」
「うわぁ、ここでは俺は妻帯者か」
モデルルームを出て、車に乗り込んだと同時に小鳥は舌を出して言う。
「意外と私の名前とプロデューサーさんの名字は、不自然な組み合わせでないので自然に書けました」
「あははは、喜んでいいのか悪いのか」
乾いた笑みを浮かべる彼に小鳥はちょっと機嫌を損ねる。
「そうですね。私みたいな二十チョメチョメと夫婦なんて、プロデューサーさんも困りますよね」
「いやいや、困りません。ただ、小鳥さんが幸せそうだなぁ、と」
「あら、私だって、結婚に憧れる女の子・・・・・・と言うのは無理か、女性ですよ」
さすがに自分でも女の子や乙女を名乗るのに無理があると悟る。
「そうですか。きっと小鳥さんならすぐに結婚できますよ」
「そうだといいのですけど」
そう言って小鳥は小さくため息をつく。やはり彼の朴念仁ぶりは本物だ。
「でも、私は相手が誰でも妻を演じるとは思わないで下さいね」
「あ、俺は大丈夫って事ですか?」
「はい、問題無しです。本物の妻になってもいいですよ」
「もの凄く嬉しいですよ」
小鳥の言葉に嬉しそうに言う彼に小鳥も微笑む。だったら、本当の妻にして下さいね、と小さく呟いて。
「でも結婚したら、プロデューサーは辞めないと駄目なのかなぁ。他の女性と親しくするのは嫌でしょ。
 いや、小鳥さんと結婚したら、と言うのだけでなく、女性一般の意見として」
「私はプロデューサーさんの仕事を知っていますし、信じていますから大丈夫ですが・・・・・・」
そこで言葉を止め、小鳥は彼の顔を見る。
「でも、浮気をしたら・・・・・・」
「浮気をしたら?」
帰ってきた彼の言葉に小鳥は表情を消す。
「その場で刺し殺す」
「あははははは」
「もう、プロデューサーさん、冗談ですよ、半分は」
「小鳥さん、残りの半分は?」
「その場で殺さない程度に刺す」
真顔の小鳥にもう彼は乾いた笑みを返すしかない。
「でも、それ以前に浮気する気が起きないほどに、二人で幸せになるつもりですけど」
「そうですね」
そう頷き、再び運転に専念する彼の横顔を見て、小鳥はそっと呟く。
本当に二人で幸せになりましょうね、と。

昼に食べ損ねたコンビニ弁当をビールと食べた。
虚しくなったけど・・・・・・遅刻したんだから昼休み返上は仕方がない