556 名前:SS[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 17:03:25 id:FfDBh0oE0 (PC)
■写真集撮影(ランクB)

765プロも、いつの間にかでかくなったもんだなぁ……資料室がこんなに広いなんて」
珍しく遅番となり、フロアの戸締りを任された三浦あずさの担当Pは、十二畳はある部屋の広さに驚いた。
いつも調べ物はしているので何度か資料室を訪れてはいたが、暗く誰もいない部屋は、いつもよりずっと広く感じた。
「奥の棚から10列目……ここだな。教えてくれた小鳥さんに感謝しないと」

そもそも彼がこんな場所にいる原因は、三浦あずさの写真集撮影に至ってメインコンセプトが決まってない事だった。
歌唱力が高く、しかも癒し系というアイドルとしては王道の位置にいながら、そのお色気のおかげで、
グラビアアイドル以上の性的なものまで欲求されるのだから、担当Pとしてその期待値は手応えと同時にプレッシャーでもあった。
写真集という最高の土俵を与えられているだけに、まだ新人ランクに上がったばかりの彼には荷が重い。
営業活動やTV出演という仕事をしながら、オフィスで頭を抱えていた彼を見て、事務員の音無小鳥が言った。

「資料室、あるわよね?そこにある伊織ちゃんや千早ちゃんの写真集って見た?」
「ええ、勿論見ましたよ……確かに素晴らしいものでしたが、うちのあずささんとは表現路線が違う」
「……じゃあ、その奥にある没カット集って見た事あります?」
「いえ、ありませんよ。そもそも本編に載せられなかったものの集まりでしょう?見る必要も……」

「……F1レーサーの佐藤琢磨は、レーシングスクール時代にトップだったにも拘らず、遅い人の記録を穴が開くほど見たのよ。
そこで、【何故この人は遅いのか?】を考えて自分の走りに大いに参考にしたの」
「!?」
「結果だけを見るなら誰でもやっている事よ。没カットを見て【何故、そうなったか?】を研究してこそ、
理解力も広がるし、路線の違うアイドルを見るからこそ、癒し系巨乳市場に新風を吹き込めると思いませんか?」

小鳥の意見に、彼はぐうの音も出ないほど打ちのめされた。まだ新人のくせに、自分は何と横着な姿勢でいたのかと。
「小鳥さん……ありがとう!俺、今日残って資料室に篭ります!!お礼は後日改めてさせていただきますから」
「気にしないで。わたしだってあずささんの写真集が売れた方が嬉しいから、当然のことをしたまでですよ。お給料も上がるし♪」
それ以上に純粋に嬉しいはずなのだろうが、給料云々を言うのは彼女なりの照れ隠しだろう。
彼女が日課のように行う如月千早いじりの時も、その根底には【愛するあまり】の精神が見えるから。
そして夜の八時を回ったくらいの頃、三浦あずさのプロデューサーは【如月千早写真集】の没カットを見て愕然とした。

「せ、先輩……何撮ってんだよ!!これは……確かに凄い……けど、事務所的に載せられないよなぁ……」
そう、没になる理由はただ写真のクオリティが低いから、だけでは無いのだ。
「この表情……この視線、間違いなくカメラマンじゃなくて先輩に向けてだよな。なんか……信頼が表れてるって言うか、
間違いなく恋する乙女だよなぁ……これ、鋭い人は気付くよな。【恋人発覚か!?】なんて記事になるのは間違いない」
年上にもファンの多いあずさならまだしも、如月千早は恋人騒動で売るようなキャラでも無い。
そして、彼女の写真集に没カットが多いのは、表情的なNGだけが理由ではなかった。

「……確か、製品版は【どんな場所でも歌姫であること】がテーマだったよな。夏のビーチで歌ってたり、
断崖絶壁のような場所で歌っていたり……【写真集なのに歌声が聴こえる】という話題で、売れたんだ」
没カットを見ていると、如月千早は実にさまざまな場所でロケをしていたようだ。
下手をすれば危険じゃないのか?と思える場所でも積極的に立って歌っている。
Bランクアイドルともなれば多少のわがままも通るし、嫌な仕事は断っても許されるのに。
没カットのページを捲っていくと、表情やロケーションもさることながら、ある一枚の写真に目を奪われた。

557 名前:SS[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 17:04:15 id:FfDBh0oE0 (PC)
「うぉ……これ、凄っ……やばい、これは下手すりゃうちのあずささんが色気で負けてるぞ!!」
多分、熱帯の地方ロケで歌っている途中、スコールが降り始めたのだろう。
そんな大雨の中でも歌っている、執念とも言えるべき如月千早の姿勢に心を打たれるが、見所はそれだけではない。
スコールのおかげで白いシャツが透け、水色のブラジャーのラインがくっきりと浮かび上がっているのだ。
おそらくカメラマンの視点から言えば【悪いとは思ったけど、気がついたらシャッターを押していた】のだろう。
偶然の上にプロの仕事が重なった、まさに奇跡とも言える一枚だった。
胸で売るようなキャラでないからこそ、この一枚は危険であり、下手なグラビアアイドルでは敵わない【三浦あずさ】の
担当プロデューサーが、思わず前かがみにならざるを得なかった一枚だった。
「そう言えば先月、珍しく先輩が荒れていたっけ……【あれは水着だからルール的にはOKなんだよ!!】って。
多分、世間がどう見るかで判断したら没ったのが実情で、それが悔しかったんだろうなぁ……」

そうだ。プロの作家が描いた絵は確かに素晴らしいが、絵を描く側の人間からすれば、ラフスケッチの方が見て有難い。
飾り付けられた完成品には、確かに計算しつくされた美があるが、その過程……【何故、そうなったか?】は
ラフ画から読み取れる事の方が多い。絵に心得のある彼だからこそ、その没カットの貴重性は分かるはずだったのに。
「こりゃ、やられたな……小鳥さんにはちょっとしたコース料理くらいご馳走しないとな」

彼は感動しながら、一つづつ没写真を見ていくが……どうも変な傾向も見えてくる。
「うわ……これなんか、うなじが色っぽい……おいおい、まだミドルティーンだぞ、先輩何やらせてんだよ!?
腰のラインを強調するのは分かるさ。如月千早はスレンダーの代名詞みたいなもんだからな。
うーん……あと、足首も綺麗だなぁ……おぉ!これなんかわずかに見えるあばら骨が色っぽい……
何だコリャ!鎖骨と肩のラインだけですっげぇ色気を感じるぞ……って、これ、歌には関係ないな。だから没なのか……」

没カットになった写真には相応の理由があるが、それにしても凄いレベルの写真ばかりだ。
さすがは【歌姫】如月千早をプロデュースしている先輩だ。俺はまだ、あの人に全然及ばない……フェチ要素がやけに多いけど。
【無いからこそ、そこに存在感を見せ付けられた時の破壊力は凄まじい】
普段から当たり前のように三浦あずさ本人と接していると、まず気付かない境地であった。

「……だからこそ、あずささんにセーラー服とか着せると人気出るのかもなぁ」
そんな不謹慎な彼の独り言と共に、765プロの夜は、こうして更けていく……


※すみません千早が出てきません。
日向コミックス版で見た、千早の透けブラを表現したいと思ったらこんな形になっちゃったよ。