398 名前:SS[sage] 投稿日:2008/03/13(木) 12:05:47 id:bMHcgND1O (携帯)
 『お返し』 
── ・ ──
P「はい、千早」
Pは小さな包みを差し出した。
千早「あの、プロデューサー、これは?」
P「ああ、バレンタインのお礼だよ」
千早「開けてみていいですか?」
P「ああ」
包みを開けると中にはクッキーが入っていた。
大きさも形も不揃いなクッキー。
一部焦げてるのもあるが、それはご愛嬌といったところか。
P「形は悪いけど、味の方は大丈夫だ。ちゃんと味見したから」
千早はおそるおそるクッキーを口にした。
千早「おいしい……」
Pはエヘンと胸を張る。
千早「意外でした。プロデューサーもやれば出来るんですね」
そう言ってPを見る千早の視線がある一点で止まる。
Pの指に絆創膏が張られていたからだ。
千早「プロデューサー、その手は…」
P「あははっ、ちょっと火傷をな……、クッキーなんて作るの初めてだったから……」
苦笑いするP。
千早「プロデューサー……」
千早は胸がいっぱいになってしまった。
それはそうだろう。
生活能力皆無の男が料理をした。
火傷をしてまで自分の為にクッキーを焼いてきた。
あまつさえ、それがバレンタインのお返しなのだから。
千早はもう、何だかたまらない気持ちになって、フラフラとPに近づいていった。
愛しさが胸の中で爆発し、Pを抱きしめたくなってしまったのだ。
P「千早…」
千早「プロデューサー……」
千早がPを抱きしめようと手を伸ばしたその瞬間
P「他のみんなは何処かな?」
千早「へっ?」
P「みんなにもお返しを渡さないと…」
千早の動きが止まる。
一体、プロデューサーは何を言ってるの?
このクッキーは私の本命チョコに対する返事じゃないの……?
混乱する千早に、Pは無慈悲な追い討ちをかける。
P「いやぁ、クッキー作って分かったけど、大変だったよ。女の子は毎年こんな重労働をして、義理チョコ作ってるんだなぁ」
千早は固まったままだった。
ぐるぐると思考がまわる。
義理? 義理とおっしやいましたか、あなたは?
春香のチョコケーキも、あずチョコスペシャルも、水瀬さんの超が何個もつく高級チョコもみんな義理?
P「俺ももらったけど、千早も義理チョコ用意するの大変だったろ?」
私はあなたにしかあげてませんよ。それも義理?
萩原さんや高槻さん達のエクセレントな手作りチョコもみんな義理?
小鳥さんのチョコフォンデュも義理?
千早の肩は震えていた。
先程までの甘い雰囲気なぞ、とうに吹き飛んでいた。
愛しさは全て怒りに変換されている。
この朴念仁に正義の鉄槌を!!鈍感には死を!!
千早「プロデューサーの……」
思い切り腕を振りかぶる。
千早「ばかああああーーーっっ!!」
Pは星になった。
── ・ ──
この日、765プロ上空で、日中にも関わらず謎の超新星爆発が12回ほど観測され、
世界中の天文関係者の間に物議を醸し出す事となった。