307 名前:[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 07:35:26 id:z6pHq2Jc0 (PC)
■ある日の風景(ランクB)

最近、あの子が変わった。
芸能誌に【成長?いいえ、覚醒です!】なーんて見出しで大きく書かれた記事は、
Cランクに上がったばかりにも関わらず、彼女の勢いを象徴してるみたい。

わたしと同い年のアイドルで、事務所内では新人という扱いになるその子は、星井美希
入ったばかりの頃は、やる気の無いただのおっぱい星人で、グラビア路線しか行き場所の無い存在だと
思ってたら……2ヶ月くらい前、彼女の担当Pに、命を助けられたとか聞いたっけ。
そこから、何かちょっとづつ変わってきたなーと思ってたけど、この前やよいと中学生ユニットを組んで、
コンサートをやったら、その変化にやよいと二人で驚いたわよ!!
前座のビジュアル系バンドが、昔の美希みたいにポテチ食べながらまったりしてるのを見て、
あの子が年上に怒鳴ってキレるなんて、想像できると思う?
あまりの迫力に、前座の奴らがビビって真面目に反省してた時の様子は、今でも忘れられないわ。
ランク上、メインはわたしだったけど……正直、あのライブで一番ファンの数を増やしたのは、美希で間違いない。

あのライブから、わたしは……正直、焦ってたんだと思う。

「プロデューサーさん!ほらほら、早く営業行こー♪」
「ま、待ってくれってば。それと美希……腕に抱きつかないでくれ。でないと胸が当たって……」
「うれしい?」
「ば、馬鹿!!嬉しいわけ……あるけど。ほら、皆見てるし!社長に見つかったら減給モノだし!」
「だいじょーぶ!そしたら美希がそれ以上に頑張って稼いであげる!」

見てて、溜息が出るほどの桃色空間を発生させてる様子は、ある意味滑稽だけど……
これが同い年のアイドルかと思うと、ちょっと自分のやり方に自信がなくなってきた。
アイツは、わたしがあんな事したら……真っ赤な顔で慌ててくれるだろうか?
子供としてしか、担当アイドルとしてしか見てないんじゃないか?

確かにアイツは忠実な下僕で、わたしの事を第一に考えてくれるけど、
それがわたしの望む関係かと言うと……正直、微妙な気もするのよね。
一応、わたしの売りはセクシーよりキュート路線だけど……女としての魅力をもう少し上げたいかも。
150センチでバスト77は、年齢平均としてはそこそこ程度だし、やよいや亜美真美に抜かれるのも嫌だしね。
このセクシー二段(やよいの一段上と勝手に仮定)伊織ちゃんの魅力ビームでアイツをドキドキさせてやろうじゃない!

『もしもし、新堂?私よ!明日から765プロに毎日2リットルの……そうよ、特濃の最高級品!カルシウムたっぷりで!!』

〜翌日〜

「伊織ー、オレンジジュース買ってきたぞ」
「いらない。やよいにあげて頂戴」
「へ?珍しいな……っておい!!なんでボウルたっぷりの牛乳なんて飲んでるんだ?腹壊すぞ!!」
「大丈夫よ!!これくらいで壊れる鍛え方はしてないわ」

我ながらベタな方法だと思うけど……用意したのは豆腐と牛乳。
どっかの歌バカと違って、わたしなら十分成長期に間に合うはず!レッツトライ!!
……と、三々九度よろしく飲んでる最中に、正面からけたたましい足音が聞こえた。

308 名前:[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 07:36:36 id:z6pHq2Jc0 (PC)
「ピヨちゃん、たっだいまー!収録おわったよ。めっちゃ笑った笑ったー」
「真美たち、お笑いアイドルもできるよね♪会場爆笑だったYO!」
「お帰りなさい二人とも。お笑い番組のゲスト審査員なんて、大変だったでしょ?」

この時、わたしはすでに危ない空気を感じてた。
イタズラ好きな小学生二人が、牛乳飲んでる人間を前にして、どんな行動に移るか……庶民ならわかるわよね?
だから、さっさと飲むのを止めれば良かったんだけど……アイツに啖呵を切った手前、ボウルを下ろすのは憚られた。

「今から、三の倍数の時だけはるるんになって、八の倍数の時に社長になりまーす!」
で、その演技力の絶妙な事と来たら!こういう時だけ生き生きとするのよね……亜美真美って。
また、春香と社長というキャラのチョイスが凄くて、春香のあざとさと、高木のおじさまの弾けっぷりが
よく似てて……我慢すればするほど、ボウルを持つ手が震え、落としそうになり、最後は不覚にも……

ぶぼわっっ!!

「うわ!いおりんばっちぃ!!」
「ちゃらりー♪鼻から牛乳ー!」

その爆発力は思ってたより大きく……2メートル向こうの窓ガラスまで、白い液体を飛ばしてしまった。

「だ……誰のせいよー!!そこ動くな二人ともっ!!」
「うわーい!逃げろー!!」
「いおりん、目からも白い涙出てる!!出てる!!」
「うるさい!まず一発、張り倒すー!!」

その後はもう……ぶつかった机から書類が散乱するわ、事務所が牛乳臭くなるわで地獄絵図だったわよ!
しかも最後にアイツは

『無理するな。隣にどんなセクシーアイドルがいようと、俺は伊織が一番なんだから』

なんて、分かったような台詞吐かれちゃったし!!
……まぁ、それはそれでちょっとだけ、嬉しいけどさ……やっぱ、それ以上に悔しい!腹立つ!!
水瀬家の総力を結集させてでも、アイツを真っ赤な顔で慌てさせてやるんだから、見てなさい!!

元々、パパに認めて欲しくてはじめたアイドル活動。
でも、美希が何かをきっかけに変わったように……わたしの中でも、何かが変わったんだ……と思った。
ランクAは目前だけど。今はそんな事どうでもいい。
わたしは……アイツをドキドキさせてやりたい。色んな意味で。
そう思うと、明日もあさっても……どんなにハードなレッスンも営業もずっと頑張れる。そんな気がした。


※「や……やっぱり、ラーメンマンだったのか!?」
 「いや、ブロッケン……わたしを助けてくれたのはモンゴルマン。それでいいじゃないか」

冗談はさておき、三択P、今まで本当にお疲れ様でした。その生産量とクオリティに毎日感服してました。
最後の選択、参加者の多さに貴方のやってきた功績がそのまま表れてると思います。
貴方の世界にいるプロデューサーと伊織に、惜しみない拍手を!本当にありがとうございました!