750 名前:[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 19:37:08 ID:MC+MyEUi0 (PC)
オサレSSの人に癒されたので久々に書いてみる。

ある日の風景

午前5時、いつものように目を覚ましリビングに向かう
「おはようございます、今日は暑くなりそうですよ」
先に起きていた妻、雪歩がなにやら籠に道具を詰めながら声をかけてきた
雪歩の実家の敷地内に建てられた離れの一戸建て、それが俺たちの生活の場だ。
本当はマンションでも借りてそこで暮らすつもりだったのだが、雪歩の親父さんが最近はマンションも物騒だからと渋り続け結局こういう形で収まったのだ。
まぁ確かにここは安全であるし、職場からも近く、不便を感じさせないいい物件ではあるのだが。
それじゃぁ行こうか、と声をかけ二人で毎朝の恒例となった散歩に出かける

「1,2、3、、、、5通ですね」
元々は人妻となった今でも投函される雪歩宛の熱烈な手紙を親父さんに先駆けて回収する雪歩に付き合ってはじめたものだが、
今は広い敷地の中をぐるりと廻るのが習慣となっている。
毎日のように投函される手紙の中にはかなり過激なものもたまにあるのだが、好意を持ってくれるのはアイドルとして嬉しいですね、と
雪歩はいつもニコニコとしながら読み終えた手紙を大事にしまっている。
夫として破り捨てたくなるような内容の手紙もあるのだが、以前あまりの内容に驚いてゴミ箱に放り投げたことがあるのだが
せっかく書いてくれたものを、と、雪歩に泣かれてしまった。
それ以降は手紙の内容について何も言わないことにしているが、あまりに酷い内容のものは親父さんに見せて送り主を××(ちょめちょめ)してもらうことにしている。
普段は会話もぎこちない俺と親父さんだが、雪歩に関することなら一致団結することが多いのだ。

手紙を回収し菜園の側を通りかかると、早くから農作業をしている何人かのお弟子さんたちがこちらに気付き挨拶をしてくる。
ラディッシュ貰っちゃいました。今が食べごろなんですって。朝ごはんのサラダはこれで決定にしましょう!」
すごく嬉しそうだ。
じゃ、そろそろ戻ろうかと声をかけると一箇所よりたいところがあるというので付き合うことにする。

こんなところに紫陽花が咲いていたなんて知らなかった。
敷地の裏門にあたるところ、咲き誇っている紫陽花を摘みながら雪歩が話す
「私もちょっと前まで知らなかったんです。でも1週間ぐらい前かな、、、お弟子さんに教えてもらったんです。
私、最近すごく思うんです。私って何も知らなかったんだなぁって。とにかくいろんなことが怖くて、冒険も出来なくて、人と話すのも苦手で、、、
今もあんまりその、得意じゃないかもですけど、、、。うまくいえないけど、、、その、アイドルデビューが決まって、
あなたが私を守ってくれるって約束してくれた時から今まで見えなかった世界が、ぱぁーって広がったような気がするんです。
あぁ、私もこの世界の一員で居ていいんだなって、嬉しかったんですよ」
少し顔を赤らめて話す雪歩にそんな大げさなと
俺だって雪歩には言葉では言い尽くせないほど感謝してるんだぞ、と照れ隠しに笑うと紫陽花を抱えた雪歩も嬉しそうに笑ってくれた。