726 名前:[sage] 投稿日:2008/08/02(土) 20:33:45 id:EOaviFxN0 (PC)
勢いのみ。
連投ですまん。

「ふう、何とか今日中に半分くらいは片付けたいなあ。……最近、春香のランクが上がってから事務的なことはさっぱりだったからな」
「あ、プロデューサーさん♪」
「あれ、春香? 帰ったんじゃないのか?」
「はい、そう思ったんですけど……スタッフの方にプロデューサーさんが、まだ残っていくって聞いちゃって、大変だなあって……」
「大したことじゃないよ。それに、春香が頑張った証でもあるからね。やりがいがあるさ」
「でも……残業って大変なんですよね。お父さんもたまにそんなことがあるんですが、大変だー、大変だーって言ってます」
「ははは。確かに楽じゃないけど、春香が心配することはないよ」
「……あ、あのー、私も残っちゃ……だめですか?」
「え? だめじゃないけど……春香がいても、手伝えることは無いんじゃないかなあ」
「ありますよっ。お茶汲みとか、コピーとか……あっ、プロデューサーさんが疲れたら、肩でも揉みましょうか? ふふふっ♪」
「……いや、やっぱりいいよ。あんまり遅くまで事務所に残っても、遠距離通勤の春香は大変だろ」
「確かに、そうですけど……私、プロデューサーさんのお役にたちたいんです!」
「そうは言ってもな……」
「だめ、ですか……?」
「うーん……わかった。じゃあ、少しだけだぞ。あんまり遅くなると、終電に間に合わなくなっちゃうからな」
「はい♪」
「じゃあ、そうだな……春香、お茶をいれてくれないか」
「了解ですっ。ふふっ、すっごく美味しいお茶いれますから楽しみにしててくださいね!」
「ああ、期待してるよ」

「じゃっじゃーん♪ プロデューサーさん、お待たせしました。特製ウーロン茶ですっ」
「……よくそんなもの事務所にあったな。ま、とにかくありがとう……うわっ!」
「きゃっ!!」
「あああっ! だ、大丈夫か春香!? やけどしてないか?」
「へ、平気です……。えへへ、運良く体にはかからなかったみたいです」
「そ、そうか、それならいいんだけど」
「それより、プロデューサーさんは大丈夫だったんですか?」
「うん、春香じゃないけど、俺も運がよかったみたいだな。全然平気だよ」
「……ほっ」
「心配してくれてありがとうな。でも、俺なんかより、春香が無事だったのがよっぽどよかったよ」
「……プロデューサーさん」
「うん?」
「それは……私が担当アイドル、だからですか?」
「え?」
「事務所の大事なアイドルだから、無事でよかったってことなんでしょうか?」
「春香……」
「それだったら、私……なんか、すごく悲しいです……」


727 名前:[sage] 投稿日:2008/08/02(土) 20:34:43 id:EOaviFxN0 (PC)
「……春香、それは違うよ」
「……」
「じゃあ、逆に訊くけど、春香は俺のことを心配してくれたんだろう? それって、俺が担当プロデューサーだからかい?」
「ち、違います!」
「だろ? 俺もそうさ。春香が俺を心配してくれるのと同じ理由で、俺も春香を心配したんだ」
「ぷ、プロデューサーさん……それって……」
「……春香、こっちにおいで」
「……はい」
「今まで、随分とやきもきさせてしまって悪かった。でも、俺と春香の立場を考えると仕方がなかったんだ」
「わかってます……」
「でも、もう自分の気持ちに嘘をつくのはやめるよ。……俺は春香を好きなんだ」
「プロデューサーさん……」
「こんな俺でも春香、付き合ってくれるか?」
「はい!」
「……よし。じゃあこれで……」
「あっ、プロデューサーさん、もう一回言ってください!」
「……こんな俺でも……って、だめだ! 恥ずかしい!」
「えーっ……。もっと手伝ってくださいよー」
「ここまでだって、じゅうぶん恥ずかしいのに、これ以上は勘弁してくれ!」
「プロデューサーさんの、けち……」
(春香がドラマの練習をしたいって、台本を持ってきたから付き合ってたわけだが……何かへんだな)
「……春香、これ本当に次のドラマの台本なのか?」
「えっ?」
「確かに今度の2時間ドラマに出ることになったけど、こんなシーンなんか、あったっけ?」
「あ、ありましたよっ。ははは……」
(うん? そういいながら机の下からなにか取り出したけど、なんだ、あれは。……ICレコーダー?)
「……春香、それは?」
「あっ、気にしなくてくださいっ、はい!」
「なんでそんなに目が泳いでるんだ」
「お、泳いでなんかないです!」
「……大体、春香の役はお菓子好きの普通の女子高生だろ? どう考えても変だよな。春香が気分を出したいって言うから
役名もそのまま春香ってことにしたんだけど……」
「い、いえいえっ、全っ然っおかしくないですよっ? お、お菓子好きのじょ、女子高生のどこがおかしいんですかっ?」
「いや、おかしいのはそこじゃ無いし……って、あっ、春香? ちょっと待て!」
「れ、練習に付き合ってもらって、ありがとうございましたーっ。で、ではこれでっ、失礼しまーす!」
「おーい! 春香ー! そんなに走ったら、お約束で………ああ、やっぱりこけた。大丈夫かーー?」
(俺の声に思いっきり手を振って応える春香。あんな姿を見せられたら、まあいいかって気持ちになってしまう俺って、
甘いのかなあ)