699 名前: [sage] 投稿日:2007/11/26(月) 06:17:08 ID:ok+7AAnN0 (PC)
■ミーティング(ランクS)


トップアイドルと呼ばれる存在になって、一ヶ月あまり……
仕事が複数ある日が当たり前となり、オフはあっても半日単位。
それでも進級に必要な日数を確保して学校へと通えるのは、プロデューサーのおかげだと思う。
クラスメイトの女の子からは『よく勉強してレッスンしてお仕事までできるね、いつ寝てるの?』
などと聞かれるけど、全てが本当に楽しくて仕方ないから毎日こんな生活でも平気なんだと思う。
……本当はそれにプラスして、家事が入るんだけど、それは秘密。

ただ、肉体的にはちょっと疲れているから、食事の後の授業はちょっとした試練だけど。
特に、同じトーンで延々と話しながら板書きを続ける先生のいる現代社会は苦手。
それでも、しっかりしなくちゃ。
だって、わたしよりハードスケジュールをこなしている人がいるのだから。


「おはようございます」
午前中の授業が終わった時点で早退し、765プロへ向かったわたしはオフィスの扉を開けた。
すると、元気よく挨拶を返してくれる事務の音無さんの姿も、社長の姿も無い。
そこにいたのは、昼の日差しを浴びながら、机に伏して倒れるように寝ているプロデューサーだった。
そう……彼こそがわたしより働いている人であり、わたしの原動力。
『無理するなよ』といつもわたしに言っておきながら、自分は終始無理をしている人だ。
業務中だから起こさなくてはいけないのだろうけど、せめて誰か来るまではゆっくり寝かせてあげたい。
自分のコートを彼の肩に掛けて布団代わりにした時、彼が何かつぶやいた。

『う〜ん……千早………冬の祭典は……うん……うん』
「……ふふっ……」
苦笑い、というより含み笑いだろうか?夢の中まで仕事をしているプロデューサーを見ていると、
自然と頬が緩んでしまった。
業界でも噂になっている敏腕プロデューサーの寝顔が、こんな子供みたいだなんて……
多分、善永さん意外は話しても信じてくれないだろうな。勿論話すつもりなんて無いけど。
無邪気というか、無防備というか……ああもう、こんなに幸せそうな寝顔を見ていると、
この前のお返しとばかりに悪戯したくなってしまう。
わたしがそうされたように、鼻をつまんで起こしちゃおうかな?

「……」
そっと彼の顔の正面に回りこみ、様子を伺う。
連日の徹夜のためか、肌が荒れているし、この寒さで唇もガサガサしている。
まるで、昔の歌にしか興味の無かったわたしみたいだ。
そのまま、彼の肌に視線を吸い寄せられるように近づいて……
「ん……あ、あれ?」


700 名前: [sage] 投稿日:2007/11/26(月) 06:17:53 ID:ok+7AAnN0 (PC)
魔が差した……のかな?近づきすぎたわたしの唇は、プロデューサーのほっぺに……
「……!?」
咄嗟に自分で口を押さえて、悲鳴を上げそうになるのをこらえた。
だって、自分でプロデューサーにキスしておいて、自分で驚くなんて何それ?って思うもの。

「や、あ、あ……ど、どうしよう……」
自分のしたことに後悔は無い……けど、不意打ちのような真似をしてしまった。
寝ている間に勝手に……って、やっぱり怒る……かな?
ちゃんと謝れば、許してくれるかな?黙っていれば分からないかな?
いや、それは出来ない。人として寝ている男性にあんなことをしてしまった責任は取らなくちゃ!!

さっきまではプロデューサーを起こそうとしていたはずなのに、今はもっと寝ていて欲しいと思う。
だって、こんなに耳まで真っ赤な顔でどんなことを話せばいいのか分からないし。
どう謝っていいのか、どう責任を取っていいのか分からないし!
好きな食事をご馳走する?それともグラビア仕事を進んで受ける?
それとも、一日プロデューサーの言うことを何でも聞いて……

「……いや、違う……よね」
一通り考えに手詰まりを迎えたおかげで、いくらか思考が冷静になってきた。
まずは彼が起きたら、ありのままを話して謝ろう。どんなに恥ずかしくても自分のしたことを認めよう。
その上で、罰はプロデューサーに決めてもらうしかない。
オーディションの時と同じ、もう後へは引けない状況になると、不思議と度胸が据わる。
もう一度見ると、やっぱり彼の寝顔は子供みたいに可愛かった。

「もう、プロデューサー……そろそろ起きてくださいな。
あんまり隙だらけだと、またわたし、ヘンな気になっちゃいますよ……」
聞こえないくらいの小さな声で呟いたわたしの目の前で、
「ん……う〜ん……あ、あれ?俺、寝てた?」
ようやくお目覚めのプロデューサーを前に、不思議と私のテンションは上がっていた。

「おはようございますプロデューサー。あ、あの……実は……」


※協議の結果、千早への罰は『ねねこセットを着けて夢世界でも会いまSHOW』に決定。
勿論、何故か話を聞きつけて後から入ってきた小鳥さんの提案です。